韓国戸籍や台湾戸籍の翻訳で注意する言葉のひとつに「毕」があります

 まあ、戸籍翻訳の上ではあまり神経質になるほどの事もない言葉ですが、勘違いしていることが多い言葉に「毕(←簡体字が表示されていない場合には「比」の下に「十」の文字)」があげられます。
 韓国の戸籍にも台湾の戸籍にも関係する話です。

 台湾戸籍や中国の卒業証書においては「毕業」とか「毕业」とよく出てくるわけで、意味自体も「卒業」のことを表すので、翻訳をしていて「卒」の簡体字じゃないかとついつい思いたくなるわけですが、「卒」は中国語でも「卒」です。

 「毕」はあくまでも「畢」の簡体字なのです。
 「毕业」は「畢業」であり、「学業を”終える”」という意味です。

 韓国戸籍や台湾戸籍などの翻訳を扱う場合、一般の人が趣味で翻訳する場合にはどのように翻訳してもまあ良しとなるわけですが、プロが業として翻訳をする場合には「どの単語は、どのように訳出するか」という翻訳会社なりのルールを決めておかないと、訳出して仕上がった翻訳文が大雑把な内容になってしまいます。

 「毕业」を「卒業」と訳すのか、「修了」と訳すのか。
 韓国のスタンプで「調査畢」をどう訳すのか。

 このあたりが、韓国ネイティブで日本人配偶者と指定生活している人とか朝鮮学校を出た主婦がアルバイト感覚で翻訳しているような場合などはきちんとしたルールを作っていない場合も多く、もとの原文ではきちんと区別して表現している言葉が、翻訳したら同じ言葉が羅列されているような事が見受けられます。

 もっとひどいものになると、ある時はこっち、ある時は違う言葉と恣意的に訳出していて、さらに、同じ文書の中で、それが逆転しているような場合もあります。

 帰化申請を沢山やっていると、他の翻訳者の訳文が持ち込まれることも多く、そのまま使おうか、どうしようか、悩むこともあります。

 というのも、例えば、依頼者を通じて訂正をしてもらうとなると、短期的には相手にとって面倒が増えて困らせることになるのですが、長期的に考えると相手が勉強してレベルアップしてしまうわけですから。

 ちょうど今も、自己申請で取り下げをした方の再申請をしていますが、前回の帰化申請に添付されていた翻訳が少し恥ずかしい内容なので、まあいいやと、全部こちらで新しい戸籍を取り直して、新しい翻訳をつけました。
 前回は複数の翻訳事務所に頼んでいるのですが、韓国家族関係登録簿証明書の左下の個別番号が書かれていなかったり、電算運営責任官の名前がピョンヘギョンとカタカナで書かれていたり、見るからに力の無い事務所のしわざであることは一目瞭然だったのですが、案の定、戸籍の表記内容にも問題ある翻訳の部分がいくつも見つかりました。

 僕も人間ですから、ポカミスというのはどうしても出てくるのですが、根本的な誤訳とか、翻訳に対する姿勢、とかに問題があるのは、他人事ながらすごく腹が立つのです。